2015年5月2日土曜日

老化への対応は早め早めに

 先月、父が81才で他界しました。10年近くにわたる介護の経験から、「どんな対応をするか」ということだけではなく「いつ対応するか」つまりタイミングが意外に重要だと思いました。
 
 医師の診断が下り、ある程度の期間にわたって介護が必要となることが予想されました。その時私が、両親の住む家を改築して「介護に適した部屋を作ろう」と提案したところ、意外にも父に「今でさえ夜中に起きてここがどこだか解らなくなることがあるのに、これから家をいじるのはよしてくれ」と言われました。
 必要に迫られてからでは時すでに遅し。頭も体ももう少し若いうちに準備しておくべきでした。
 
 それではせめて玄関の上がりかまちの段差を少なくしようと、踏み段を置いたところ、たちまち転倒してしまいました。幸い怪我はありませんでしたが、父にとっては「上がり下りのしやすさ」よりも「慣れ」の方がはるかに大きな要因だったと気付かされました。
 
 あちこちに取り付けた手摺は有効でしたが、これも時々「ここに手摺があるよ」と言ってあげないと、気付かない場合がありました。
 
 一方、早めの対応が功を奏した事もありました。
 
 介護生活が始まって間もなく、父の通院の途中で、母が運転中に事故を起こしました。幸い二人とも軽傷の自損事故で済みましたが、一つ間違えば…。私は悩んだ末に運転をやめてもらいました。
 無理をしなければまだまだ自分で運転できた母は残念そうでしたが、1年ほどすると「むしろよかった」と言ってくれました。
 
 それはバスやタクシー等を利用するにも、それなりの適応力が必要だったからです。「その気になればまだ自分でも運転できるくらいの能力があるうちでないと、新しい(?)交通手段にも対応できなかっただろう」ということです。
 
 年をとってからこれまでの習慣を変えるというのは簡単なことではありません。家の改修に限らず、専門医の選定、公共交通機関や介護サービスの利用など、「老い」への対応は、変化への適応力が残っているうちに家族で良く話し合い、早め早めに対応していくことが大切だと思いました。
在りし日の両親 2014年8月 群馬の森にて